講演概要:
CAEは、定義が色々あるものの、ありありとの中身で自明となっている。CAEは現象観測、現象記述、現象の数値解析のスパイラルによる技術課題の解決プロセスである。とりわけ現象のモデルを数値化方法で決められた手順で計算機上で行うことを特徴とする。CAEによる課題解決には汎用CAEツールの進歩が大きな役割を果たした。
材料系CAEは、敢えて機械系CAEと区別する言葉だが、厳密にその範囲を限定されない、できない。技術課題の解決という目的、さらにこの目的を達成するための基本手順は材料系CAEも機械系CAEも同じだが、現場のCAE技術者が工夫・苦労している方向が偏っている。機械系CAEは基本的に決まった運動量、エネルギー輸送現象においても、数値計算アルゴリズムや離散化手法などには工面するのに対して、材料系CAEは、まず物理現象の抽出及び現象論の数学記述に大きな労力を落としている。この現象は、コンピュータハードウエアや汎用CAEツールに大きく関わり、材料系CAEを支えるプラットフォームはまだ機械系CAEほど構築されていないと言える。さらに、CAEの研究及びソフトベンダー産業にとって、新しいCAE時代の課題と市場を意味しているではないか。
CAEによる技術課題解決の幾つかの事例を用いて、材料系CAEにおける現象記述、すなわちモデル化の重要性を強調する。現場においては、CAE技術者は不足し、真のCAE技術者が一握りだ。さらに、課題の解決には、このCAEの一連の手順をアレンジする感性も、粘り強く積極的に立ち向かう姿勢も重要だろう。これはもはやCAE範疇を超えた問題だろう。