講演要旨
乱流中に固体粒子が混入する系は,粉体輸送や燃焼器、化学反応器内の流れ,
汚染物質の大気や海洋中での拡散,血液の流れなど,流体工学,環境工学,
生体工学など広い分野に関連する問題である。その流れ場の微細構造における
固体粒子-乱流渦間の相互作用による乱流変調や粒子の滞留時間,乱流拡散,
堆積量と粒子の半径,形状,密度分布などの複雑非定常現象の解明は,
将来のあらゆる方面での貢献が期待される。
乱流解析の分野においては,流れ場全体を直接解かずに乱流の局所等方性を
有する小スケール乱流構造に着目して, そこを何らかの形でモデル化すること
により乱流場を解く手法であるLarge Eddy Simulation(LES)が,高レイノルズ数,
三次元,非定常性などの乱流の特徴を再現しうる乱流数値解析手法として,
その重要性が益々大きくなりつつある。LESは,流れ場を直接解析するDNSに比べ
計算時間の短縮と費用の節減が可能である点,また流れ場全体をモデル化する
RANSに比較しても精度面から優れているという点から,工学的にも有用と視される。
今回の講演では,Large Eddy Simulation数値解析手法を紹介するとともに,
固気混相乱流解析における分散粒子と乱れの相互作用を考慮した
Dynamic LES数値モデルを紹介し,その基本的な流れ場における検証を示す。