講演概要:
心臓血管系は,血管網を通して各臓器と器官に必要な時に必要な量とされる血液を供給し機能維持を図ることができ,心拍出量や動脈血圧,末梢血管抵抗や血流などへの自動調節機構が備わっている.本研究は,この自動調節機能と心臓血管系血行力学の相互作用を総合的に評価できる計算力学モデルを構築し,心臓血管系の動的調節機能に起因するマルチメカニズムの機序及び循環器系のマルチスケール血行力学を解析可能なプラットフォームを提供する.
循環器血管系全体の循環機能を解析するためにまず全身動脈・静脈血管系の集中係数血行力学モデル(0次元モデル)を構築した.更に交感神経系及び副交感神経系を取り入れた複合的自律神経系モデルを開発し,そして0次元モデルと自律神経系モデルを結合させて血行力学と調節機能の相互作用を評価できる計算力学モデルを開発した.本モデルは,バルサバマヌーバ間と立ち上がりに関する基本的な調節機能メカニズムを精度よく再現でき、その妥当性が検証されている.更に心臓血管系のグローバルな循環機能と局所的な血行力学的特性を総合的に解析できる,血流の0次元モデリングと3次元モデリングを結合させたマルチスケール血行力学モデルを開発した.腹部大動脈・腎動脈分岐部の血流動態や動脈硬化との関連性,左心室の生理学的機能や拡張型心筋症の機能低下に関するマルチスケール血行力学的評価を行った結果,本総合的計算力学モデルの有効性が確認できた.